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【相続実務の事例】<代々地主型>鑑定評価や広大地評価で6951万円節税した清水さん(1ヶ所の土地に広大地適用、2ヶ所の土地に鑑定評価適用)
2020/07/17
【相続実務の事例】<代々地主型>鑑定評価や広大地評価で6951万円節税した清水さん
(1ヶ所の土地に広大地適用、2ヶ所の土地に鑑定評価適用)
※小規模宅地の特例改正前、広大地の特例撤廃前の事例です
●相続データ
○被相続人 父(農業、不動産賃貸業・80代)
○相続人 3人(長女50代、次女50代、長男50代(本人))
○財産の構成 自宅、貸家、駐車場、山林、畑、現預金
●相続の状況
清水さんの父親は旧家の跡継ぎで、代々の不動産を数多く所有しており、農業と不動産賃貸業を営んでいました。20年ほど前に母親が先に亡くなり、晩年は長男と2人で暮らしていました。父親は借金が嫌いな性格で負債は全くなく、1ヶ所の土地を貸家に、もう1ヶ所の土地を一部駐車場にしている程度で、それ以外の土地は更地のまま維持されていたため、特に節税対策はできていませんでした。
●相続の課題
清水さんの父親は遺言を残していませんでしたが、姉弟は仲が良く、遺産分割協議の話し合いは問題ありません。清水さんの姉の知り合いの弁護士さんに相続の手続きをお願いしましたが、その弁護士さんは土地評価などが不慣れであり、依頼を受けているにも関わらず、自信を持って処理しきれないと自ら表明していたそうです。弁護士さんの計算では、相続税として1億円払うことになると言われ、不安になり、相談に来られました。
弁護士さんの試算した書類を持参して頂き、内容を確認したところ、土地評価について、おかしな点がいくつか見受けられました。
相続財産の中に、現況山林になっている約465坪の土地を所有していますが、市街化区域の土地で、路線価が設定されているのに倍率評価がされていました。また、市街化調整区域の土地のうち、1ヶ所はまとめると約450坪ありますが、6筆に分かれており、貸宅地の評価がされていました。しかし住宅地図を確認したところ、建物が建っている様子はなく、もともと市街化調整区域のため、原則建築はできません。清水さんに確認したところ、市に公園として提供されていました。このような場合、賃借権を控除して評価しますが、借地権は発生していませんので、貸宅地評価ではなく、またしても大きな間違いです。
土地評価は一から見直しが必要で、今後の課題等を整理して一緒に概算見積もりを提示して、ご姉弟で話し合って頂いた結果、今の弁護士さんを断って、こちらに委任して頂けることになりました。
財産の大部分は土地なので、土地の評価がポイントになりますが、駅から割りと至近のところに築30年以上経過している古い貸家があったりと、土地評価の他にも課題は多いように思えました。
また現金はほとんどなかったため、相続税をどうやって捻出するかが一番の課題です。
【遺産分割】 遺言がないので、遺産分割協議をする予定
【評価・申告】 不動産が多く、土地の評価がポイントになる
【納税】 現金はないので、どこか土地を売却しなければならない
●解決へのアドバイス
○鑑定評価を採用
当初、市街化調整区域の山林の評価額が7000万円とあまりに高いので、固定資産評価証明書を確認したところ、一部駐車場にしている部分が雑種地扱いとなっていました。固定資産評価額は宅地並みに高く、書類上は雑種地ですが、市街化調整区域のため建築はできず、また山林の部分は利用することもできません。利用するには造成をしなければなりませんが、かなりの造成費がかかることが予想され、売却しても固定資税評価相当の金額では難しいと言えます。こうした状況を考慮すると、倍率評価だと高すぎると思われますが、相続税評価は固定資産評価額に倍率を掛けるため、かなりの評価になってしまいます。市街化区域の土地であれば広大地評価ができ、減額の余地がありますが、市街化調整区域には適用できず、評価を下げるためには鑑定するしかないという結論になりました。
また、私鉄の最寄り駅から徒歩7分程度のところに7件の貸家が建っている一団の土地があります。その土地の中には私道があり、貸家は両側に並ぶようにして建っています。土地の評価は、私道と貸家を分けて評価し、貸家については1軒1軒個々に評価をしていきます。合計すると、評価額は5600万円以上していますが、建物は築30年以上経過し、家賃も安いため、収益性は悪く、建替えをするには借家人に明け渡しを求めなければなりません。また一番奥は他人の土地にも接しているため、私道をなくす訳にもいきません。そうなると現在の形態のままでしか利用できず、土地全体で有効利用するのは難しい状況と言えます。
そこで、山林と貸家の2ヶ所につき、鑑定評価をして、約40%評価を減額しました。
○広大地評価の採用
清水さんの土地は大きいものが多く、なかでも市街化区域内に現況山林になっている1500㎡の土地を所有しています。周辺は工場と一戸建てが混在する住宅地ですが、工場として使うには面積が小さ過ぎるため、専用住宅用地としての利用が一番適していると言えました。二方道路に接する角地ですが、それでも区画割りをするにはどうしても道路負担が必要になると判断できますので、区画割り図を作成して広大評価を採用することにしました。
○農地の納税猶予を選択
自宅から少し離れたところに市街化調整区域の畑5000㎡を所有して耕作しています。農地を相続した場合、納税猶予を受ける特例を利用することができますが、長男である清水さんが、今後も農地を耕作していくとのことでしたので、納税猶予を受けることにしました。
○遺産分割協議
納税用地は姉弟3人で共有し、その他の財産は全て跡継ぎである長男が相続することに しました。その代わり、姉2人には本来の法定割合の半分を目安に代償金を支払うことにしました。
●ここがポイント・節税と注意点
【遺産分割】
・納税用地は姉弟で共有とした
・代償債務、代償債権を使う・・・土地を長男が相続する変わりに、姉には長男から代償金を支払う
【評価・申告】
・市街化調整区域の山林と貸家に鑑定評価を適用して評価減した
・現況山林の土地に広大地を適用して評価減した
【納税】
・駅から一番遠い土地を売却して納税した
・2ヶ所の畑について農地の納税猶予を選択した
●相続税の節税額のまとめ
※小規模宅地の特例改正前、広大地の特例撤廃前の事例です
相続財産 3億6344万円
◆小規模宅地減額 △ 1005万円(240㎡80%適用)
債務等 △ 394万円
課税価格 3億4945万円
基礎控除 △ 8000万円(相続人3人)
相続税総額 6706万円②・・・最終の相続税額
◆配偶者税額軽減 △ 万円
納付した相続税総額 5983万円・・・正味財産の16.5%
納税猶予した総額 722万円・・・正味財産の 2.0%
当初の相続税総額 1億2934万円①・・・節税考慮なしの場合
◆評価減の節税額 6228万円①-② ③
◆配偶者税額軽減 万円 ④
◆節税額の合計 6951万円・・・財産の19%残った
◆主な評価減の合計1+2+3 △1億5731万円
<評価減1> ◇広大地の減額 △ 9725万円
(※土地1山林通常1億9379万円→広大地9654万円)・・・公図
<評価減2> ◇鑑定評価の減額 △ 5001万円
(※土地1山林と駐車場通常 6517万円→鑑定評価2450万円)・・・公図
(※土地1貸家7件 通常 5354万円→鑑定評価4420万円)・・・公図
<評価減3>
◆小規模宅地 △ 1005万円
誰が→長男 どこに→自宅 割合→240㎡80%適用
比較→賃貸土地の場合 862万円200㎡50%
※賃貸用の土地よりは自宅に適用したほうが減額が大きいと判断した
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