夢相続コラム
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【運命を変えた相続の極意】直前下ろした預金の不安をなくした三田さん
2021/10/25
【運命を変えた相続の極意】直前下ろした預金の不安をなくした三田さん
相続関係者
被相続人 父(不動産賃貸業)
相続人3人(配偶者、子供2人、長男・相談者、長女)
相続事情
三田さんの父親はもとは農家ですが、所有する自宅や農地が全部区画整理地の中に入り、宅地となってしまってからは農業も続けられず、貸し駐車場にして生計を立ててこられました。駐車場は全部で4ヶ所、合わせて80台程になりますが、月末に集金をするのが三田さんの仕事です。
自宅は駅より徒歩4分程度のところにありましたが、裏側が山になっていることや道路が狭いことから、10年ほど前、現在の土地に建て替えています。まだバブルの余波が残っているころで、土地100坪が売れてお金が入ってきたことがきっかけですが、さらに駅に近い現在の自宅に移ったわけです。しかし、もともとは三田家は質素な家系で、土地を売ってお金が入ったとはいえ、お父さんが建てた家は木造平屋。毎月の生活費もほとんどかからない程で、贅沢をすることはなかったようです。
相談者にこられたきっかけ
父親は土地売却の代金や毎月の賃貸収入がありましたので、金銭的にはまとまった預金がありました。近隣の人から相続の話を聞く度に、「相続になると相続税が大変だ」という話ばかりで三田さんも常日頃からどうしたものかと悩みの種だったのです。本を読んだり、相続に関するセミナーに参加したりして、知識を増やし、自分なりに相続の対策をしてきました。
父親が80歳近くなって入退院を繰り返すようになってからは、まとまった預金があると相続税で持っていかれることが心配になりはじめたのです。父親名義の預金をそのままにしておいたのでは相続税を払うことになると考えた三田さんは、そのほとんどを母親と三田さん名義の口座に移し替え、一部は引き出してタンス預金として家にもおいていました。
現実に父親が亡くなってしまうと、手続きの準備のために、本を購入して相続税の計算をしてみましたが、それでも自分の計算が正しいのか、下ろした預金は大丈夫なのか、ということが心配になり始めました。また、誰に頼めばいいのかがわかりません。父親の毎年の確定申告は自分で計算をして出しているので、親しい税理士もいません。そこで私の本に相談ができると書いてあることから、それを頼りに相談に来られたのでした。
来られたときは、申告期限まであと1ヶ月半前で、ほとんど余裕がありません。そこで、その場で委任の決意をしてもらい、進めることにしたのでした。
運命の分岐点・ここがポイント
☆預金は隠さないほうが得策
聞いてみると三田さんが事前に下ろした預金は数千万円にもなるとのこと。相続税を払いたくない気持は十分わかりますが、現在では預金から調査の対象となるため、家族名義の預金は相続財産として一番に調査、指摘されるところです。故意に隠したとしても金融機関に調査をすれば、すぐにばれてしまうというもの。三田さんには、余分な追徴金や重加算税を払わないためにも下ろした預金は相続財産として申告するよう説明し、納得してもらいました。生活費や入院費用程度であれば説明はつきますが、下ろした金額が多すぎるので説明がつかないと判断しました。
☆土地の評価を下げる
そのかわりに、土地の評価で節税できないか検討しました。元の自宅は裏山が斜面になっており、不整形でもあるので、不整形地の計算をするのと、全面道路の幅員が4m未満であることからセットバック分を減額しました。
また、自宅の土地は200坪程度あり、半分は自宅、半分は貸し駐車場ですので、それも分けて申告をして減額するようにしました。
☆母親は次の相続対策ができる土地を相続
相続人のうち、妹は嫁いでいるので別世帯ですが、三田さんと母親は同居している同一世帯です。そこで、妹が相続したいという土地以外は三田さんと母親で割り振ればいいので、母親の相続対策ができるようにと、貸し駐車場を中心に相続してもらうようにしました。自宅は三田さんが相続するようにし、小規模宅地の特例は三田さんが受けるようにしました。この結論を引き出すまでに何度も試算を重ね、どの配分がいいかはじっくり検討した上で導き出しています。
☆納税は延納で母親の土地を担保
配偶者の特例で母親の納税は無税ですが、三田さんと妹さんは相続税の納税が必要です。空き地が多いので売却の選択肢もありますが、どこも駅から近いので保有された方がいいと判断。そこで一番利用しにくい土地はもとの自宅ですので、その土地は母親が相続し、延納の担保提供としてもらいました。現在の駐車場収入で延納返済ができなくはありませんが、金銭的な余裕は減ることになるため、次の予定としては、母親の相続対策として土地有効利用をしてもらい、節税しながら、キャッシュフローも余裕を持たせていくことにしています。
相続実務士®の視点
三田さんはこちらの説明を理解して頂き、受け入れて頂けるタイプの方なので、一緒に進めていくには、意思の疎通をはかりやすい方ですが、とても慎重で、実は石橋をたたいても渡らない慎重派のように見受けられます。申告期限まであと1ヶ月半というときまで、いくつかの期間に相談に行ったにもかかわらずどこにするかを選択しなかったことはその現れだと感じます。そんな方がこちらを選んで頂いたことは貴重であり、有り難いことですので、今後も信頼関係を築きながら進めていければと考えています。土地を大事にしてこられたお父さんの意思は十二分に守っておられるので、次の一歩を踏み出し、余裕があり、楽しみがもてる生活を送って頂ければと思う次第です。
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