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【相続実例コラム】公正証書遺言・遺贈:共有名義を解消する遺言書が必要だった天野さん
2020/06/18
【相続実例コラム】公正証書遺言・遺贈:共有名義を解消する遺言書が必要だった天野さん
●相続関係者
被相続人 叔父(但し、生前)
相続人3人(配偶者、子供2人、相談者・甥)
●相続事情
昭和57年に天野さんの祖父の死亡により、自宅不動産の分割協議 が行われ、 父(長男)と叔父(次男)で相続したとのこと。約140坪の土地は、40坪が叔父100%の名義 に、100坪が 叔父と父の約50%ずつで共有名義の協議が成立し、その通りの不動産登記が行われています。その際祖母は在命でしたが、二次相続のことを考えてか、不動産に関する相続には係わっていません。
問題は、叔父は既にこの土地を離れており、当時より相続の意思がなかったにも関わらず、分割協議の全てを知り合いの税理士に依頼したため、当時の祖母の意向も反映された形で、父・叔父共に内容を理解せずに協議が成立してしまったのがいきさつでした。
天野さんがあとから聞いたところによると、実際には祖母・叔父・父の実印は押されており協議は成立しているが、父、叔父共に中身をよく理解せずに郵送または内容未確認の状態で捺印しているのが実態だということ。
その後、叔父は該当不動産には関与していないため、固定資産税は140坪分全ての全額父が負担し続けています。現在、祖父の死亡6年後に対象不動産の相続に関わっていない祖母は死亡しているので、関係者は父と叔父だということです。
●相談者にこられたきっかけ
天野さんは、もう何年か前より、父親からこのままではうまくないので、なんとかしたいと聞いていましたが、そうした思いがあるとき、たまたま私の本を書店で見つけて購入し、HPから相談してこられたことがきっかけです。過去にもHP等で司法書士・行政書士に相談しましたが有効な方法が見つからない上に、最終的には、どこ(誰)に依頼すれば良いのかが分からず、信頼できる方 をご紹介まで頂ければ幸いだというご希望でした。
天野さんの希望は、両親が住んでいる実家の不動産名義を、叔父の名義から、実体に合っている父の名義に変更を行いたいということです。
●真の名義人にしたい
天野さんの疑問は、果たして内容が実態と合っていない為、叔父の了解を得た上で改め分割協議を行う、または所有権の持分を父の名義に変更するし遺産相続分割協議のやり直しは可能であろうか?その際の名義変更に関し、税務署に贈与扱いとされない方法はあるだろうか?また遺産分割協議のやり直しができない場合、将来叔父の財産相続時に父や自分側へ財産を相続する方法があるのだろうかということでした。
参考までに書いておられたことは、叔父は祖母死亡時に祖父死亡時の相続不動産の全て放棄する内容の文書を実印付きで父へ送付しましたが、既に所有権の登記は済んでいたため法的に何の手続きもせずに、その文書も法的権限は何ももっていない紙切れになってしまったとのこと。当然ながら、それで現在に至るわけです。
●運命の分岐点・ここがポイント
☆かかる費用の比較検証
天野さんより不動産の資料をお預かりし、まずは、かかる費用を検証してみました。
現在の共有部分の、叔父さんの持ち分を贈与、売買いずれかで、お父さんに移す場合、下記のように課税が逃れられないと想定できました。
叔父の持ち分を父に贈与した場合の税→贈与税6,900,000円
路線価で売買した場合の税→824,510円(購入側・登録免許税+不動産取得税)
3,686,162円(売却側・譲渡税)
☆「公正証書遺言による遺贈」
贈与か売買だと、すぐに名義が変えられますから、課題は解消しますが、そのかわりに税金も少なくありません。他の選択肢があるならば、わざわざ高い税金を払ってまで名義を変えることはないのではと思えました。残る方法は、叔父の相続時に遺贈をしてもらうことですが、それには父や天野さんが相続人ではないため、遺言書が必要になります。しかし、相続税の場合は、叔父の財産が基礎控除の範囲内であれば相続税がかからないことになります。
幸いにして、叔父もその家族を含め、祖父の遺産相続に関する内容の不備を認め、両家に負担の最小限となる方法で本件の解決に全面協力頂く意思があり、方法の選択については天野さんに任せると言うこと。
そこで、こちらでは負担が少ない、「公正証書遺言による遺贈」を提案しました。
叔父の名義分(父との共有名義含む)を父、父が亡き後は天野さんに特定遺贈する「公正証書遺言」を作成する、仮に天野さんが先に亡くなっている場合は、その法定相続人へ遺贈するという内容です。
☆公正証書遺言書の作成
叔父の財産の確認ができれば現段階で相続税がかかるか否かの判断がつきますが、いずれにしてもまだ先のことであり、他人の家庭の財産は確認しにくいということ、相続税がかかるのであれば天野家が負担することで、特に確認はしないとしました。
日時を決めて、叔父に公証役場に来てもらい、こちらが証人になって無事に公正証書遺言ができあがりました。保存は父親がすると言うことで、叔父は天野さんにそれを託し、全員が一安心となりました。費用は、十数万円ですから、贈与税の20分の1程度でした。
●相続実務士の視点
最初のメール相談では「懇切丁寧なご回答、感謝いたします。親身に相談者の立場になって考えていただいているお気持ちが伝わってきました。私がここ半年で本を読んだりして得られた感触とほぼ近い先生のお答えで安心できました。」という返事を頂きました。
その後、公正証書遺言ができあがるまでは、来て頂いての打合せが2回、メールのやりとりが50回程度という積み重ねがありました。無事に公正証書遺言書ができたときは、「お世話になり、本当にありがとうございました。ここまで細かくうるさく質問する依頼者も少ないと思いますので、コーディネイト費用は3倍請求したいところでしょうが、お互い勉強になった事もあると思いますので善意的にご理解いただけると幸いでございます。」と。
問題を解決してお役に立てることは当然ながら、喜んで頂けることができれば仕事冥利につきることでもあります。
弊社では様々なプランをご用意しております。
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